Great cloud noise!

再びのトルコは、2月17日~24日。再びのアンタルヤと今度は初めてのイスタンブール。基本はワインと食のリサーチというミッション。その周辺情報として文化を探る…ということで、最初の話題はいきなり、「世界10大ダービーマッチ」ではないかと推察している、イスタンブールトライアングルダービーのひとつ、ガラタサライ対ベシクタシュ戦@ターク・テレコム・アリーナ。

今季リーグではもうひとつのイスタンブールのクラブ、フェネルバフチェの後塵を拝しているトルコナンバー1人気チームのガラタサライだが、この4日後に同所にチェルシーを迎えて、チャンピオンズリーグ決勝ラウンドの第1戦を戦うだけにここは…というようなフットボールの話はFACEBOOKなどでつらつらかくとして、ここでは、いかにフットボールがイスタンブールという町で影響のあるものなのか、というお話を。

この日の午前中。僕はイスタンブールの観光と生活がクロスオーバーする不思議な街角、スパイスマーケット(エジプシャンマーケット)を歩いていた。とりあえず一回り…というにはあまりにも複雑、混雑、広大なバザールを、とりあえず一回り。そこで声をかけられるのは、まずは、中国語でその次に韓国語。ニーハオー、アンニョンハセヨー。親日国と言うイメージだったのだが…という疑問についてはまた別のエントリーで(これについては面白いエピソードがありました)。ということで商売熱心な声はたくさんかかるけれども、それだけという感じ。それが一転したのは、露店で、ガラタサライのマフラーを買ったその瞬間から。もう一度マーケットを回ると…

商売関係なく、おおーーーガラタサラーイ!お前どこから来た?日本か?そうかー、ガラタサラーイ!急激な熱烈歓迎。おもしろいのは…
「おーー日本人でガラタサライか。写真とろうぜ。いいねえー。まあ、俺はベシクタシュファンだけどな」と、もはや、よくわからない歓迎っぷり。今日のダービーのチケットを持っている、というとあれこれ親切なアドバイス。「安全対策はしっかりな(ニヤリ)」(ベシクタシュファン)。
大体イスタンブールの大概のボーイズ(おっさん含めての総称としてのボーイズ)は、ブロークンな英語だろうと英語なんて関係なくトルコ語でも一方的にでも、フットボールは共通言語だ。イスタンブールの中でもかなりスタイリッシュな部類にはいる今回のオルタキョイのブティックホテル。スタイリッシュなイケメンくんスタッフたちも、僕がフロントに顔を出すたびにフットボールの話だ。日本人で少しサッカーが好きな人なら、こういえばいい。
「02の仙台でのトルコとの試合、われわれは負けたけれど素晴らしかった。ハカン・シュクルはいいな。リュシュトゥは素晴らしい。あとあのモヒカンの…」これでいい。イナモトとジーコの名前を出せば日本はいいな、ともいってくれる可能性は高い。

実際のスタジアムへ足を運ぶと…さすが欧州随一ともいわれるタークテレコムアリーナのクラウドノイズ。だが、熱狂だけではなく、こういってはなんだが、驚くほどサッカーへの理解度が深い。いいプレイへの拍手、ここぞというところのブーイング。そのすべてが選手のグルーヴと一体となっている。フットボール文化が頭ではなく血の隅々まで沁みこんでいるのだろうか。

2度のボディチェック、厳重に囲われ、一人が身をよじりながらではなければ入れない、まるで監獄のようなゲート。これは、実はアウェー側のスタンドだったから。とはいえこの日は、アウェーサポーターの入場禁止。スタジアム全員がホームのガラタサライサポーターという、今まで経験のない状況。この雰囲気の中でむしろ鋭い攻撃で優勢に進めていたベシクタシュのメンタルに驚愕だ。
スタンドでは、シーズンチケットを持っているというおじさんと、これほど応援と相手チームへの罵詈雑言のボキャブラリーがトルコ語にあるのか!と驚かされた、いや、それ以上にこの可愛らしさで??という少女とともに観戦。おじさんの的確な解説「あのウルグアイ人守護神はいいぞ」「スナイデルは今日はダメだ」「これからでてくるベシクタシュのポルトガル人プレイヤーは危険だ」が心地よいBGM。

試合後、帰りのタクシーの運ちゃんはトルコ語と固有名詞だけだが、熱くフットボールを語る。こちらも固有名詞だけだがそれでもボーイズ同士はなんだかわらないいいコミュニケーションが生まれる。見事にトラフィックプロブレムを回避した運ちゃんは一言。「この、車、フィアット。俺、シューマッハー、だろ」
ここでフットボールから話はF1に。お互いシューマッハーの今を気遣い、アロンソファンで一致。気分よくオルタキョイのホテル近くで下車。露店の強面の兄さんに声をかけられる。
「おーーガラタサライ、勝ったな!良かったな!まだ闘い続けたければこの先にベシクタシュファン集まってる店があるぞ。俺もベシクタシュファンだけどな(ニッコリ)」
そのユニフォームとマフラーを隠して歩いていく方がいいぞのポーズでアドバイス。

イスタンブールの多くのボーイズたちとコミュニケーションをとるなら、酒よりもまずはフットボールが、いい。


Boys are link the food

若い世代のソーシャルアクションは、多少、青くて、熱くて、思いつきで、いいんじゃないかと思う。僕らの様な世代になれば、リスクを背負ったり、回避したり、利用したりするという最初の1歩があって、それはそれで大切なことなのだけれど、それは僕らがやればいいことなのであって、理想や思いをそのままぶつけるようなことがあってもいいんじゃないかとも思う。なんといっても体力があって恐れ知らずのうちにやっておいたほうがいい。もちろんそこにはいろいろな人の我慢と好意があってはじめて成立することを、あとからちゃんと知ればいい。わがままが許されるのは、そこに、何かが生まれそうな期待感があるから。最近は単なる面白イベントではなく、僕から見ても、うらやましい勢いだな、と感じる若い世代のソーシャルアクション×イベントが増えているようにも思う。

純粋に若気の至りではなく、すでに経験を積んで、しっかりプランニングして、いくつもの商業イベントも成功させて…という2人が組むのだから、冒頭で書いたものよりもしっかり筋道を立てたイベントではあるけれど、そのエッセンスはやはり、「よし、やっちゃおうおぜ」。
『サルベージパーティvol.5~テーマはちょい足し』&『フーディストリンク2周年』
設立2年目を迎えた、気鋭の若手フードプロデューサーでありケータリングシェフである、フーディストリンク代表・高田大雅くんと、数々のイベントや店舗での食のプロデュースを手がけるトータルフードプロデューサー平井巧さん。2人はいままでも手を組んでいろいろなフードイベントを成功させてきたが、このサルベージパーティは、二人の「よし、やっちゃおうぜ」がそのまま実現してしまったイベントだ、と思う。

要旨はシンプル。

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どこの家にもある、使い切れずにいる野菜や加工食品、調味料。このままだと廃棄されてしまう食材を持ち寄り、その「救い方」をみんなで探る。プロのシェフがあなたの目の前で、集まった食材によるメニューをその場で考案。完成した料理はみんなでシェアし、調理に使われなかった食材は希望者に持ち帰ってもらいます。

 

過去4回開催、参加者には食に興味のある方が多く集まり、高田シェフが目の前で調理するライブクッキングと、自分の持って来た食材がどんなメニューに使われるのかというワクワク感を楽しんでいただいています。あの食材にこんな使い方があったんだ!という驚きと発見は、とくに主婦の方に大好評!自分では思いもよらないシェフの技とアイデアを持ち帰り、家で試して2度美味しい。そんな体験ができるのがサルベージ・パーティです。

 

参加するには、家に眠る食材を持ち寄る必要があるので、冷蔵庫・キッチン整理にもなって自然とキッチンがスッキリ。余った食材を洗い出すことで、自分の買い物傾向について知るきっかけにもなります。
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というもの。

5回目となる今回、MCという立場で初めて参加させていただいたのだが、楽しい会であると同時に2人の「よし、やっちゃおうぜ」にそれを支えて、一緒に楽しもうという人たちの微笑みが広がるいい会だった。それは確実に彼らがその想いをしっかり伝えきってきたからなのだと思う。

ライヴクッキングの実況は実に楽しかった。写真のような食材を高田シェフが組み合わせて即興で作っていくわけだが、こちらもプレッシャーをかける。例えば、偶然にもあった食材が、パスタ、たらこクリームソースのレトルトソース、刻みのりがあったとする。それはラッキーなことかもしれないがもちろんこちらは実況でプレッシャーをかける。
「まさか、その組み合わせで料理しないよね?」
終始、笑顔に包まれた会場は、2人の食に対する考え方、それはもっと楽しく食を考えようよ!という世界そのままだったように思う。

正直にいうと、若い世代の「よし、やっちゃおうぜ」イベントのお手伝いは時に、後味の悪いこともある。想いはいいが、感謝も努力も配慮も足りない、自分たちの満足感だけに終わるものがあるからだ。それでもなお、「よし、やっちゃおうぜ」はあるべきだと思う。ソーシャルアクションに関して言えば思い込みだらけで間違った危ないものもあるかもしれないけれど、それでもなお(繰り返しになるけれど)、「よし、やっちゃおうぜ」はあっていいと思う。その中で、いろいろな人の幸せな協力が得られて、参加者が幸せを持って帰れて、そして自分たちの想いを着実に残していくことができる。彼ら2人のソーシャルアクションイベントは、実に、素敵な「よし、やっちゃおうぜ」のカタチがあった。今後も期待しています。

↑左:平井さん、真ん中:高田さん、右:日本で唯一の出張専門バーテンダーとして僕ともいくつかのイベントをてがけた、まちゃさん。2人ももちろんプロだが、まちゃさんのようなプロ、そして同志ともいえる仲間たちのボランティア、理想を実現するための会場など、いろいろな支えを獲得するのも必要なこと。感謝、配慮、情熱。それが2人の持ち味か。