Beautiful naiveness wine of Lebanon

白金高輪14で開催している「ワインで世界旅行」シリーズ。12月1日の日曜日の午後は、レバノンワイン。中近東・北アフリカ編、地中海ロゼ会などでご紹介し、参加者のみなさんから好評だったので、今回は、そのレバノンに絞って、じっくり、ゆっくり、楽しく味わっていただく会を開いた。

ゲストにはレバノン出身で、レバノンワイン、オリーブオイルを扱うヴァンドリ-ヴを運営するスヘイルさんご家族をお招きした。
http://www.vinsdolive.com/ja/
現地のいろいろな情報などもお聞きしながら、ワインはもちろんレバノンのオリーブオイル、スヘイルさん手作りのレバノンのソウルフード、ひよこ豆のペースト「フムス」も登場。レバノンのテーブルの素朴で美しく、そして温かい風景が広がった。

そう、レバノンワインの良さも、素朴であるけれど美しく、どこか温かみのある世界。アタックは優しく、派手さはないけれど、喉をゆるやかにあたたかく通り過ぎると、静かに、でもうすっぺらくなく、じわじわと、むしろアタックにはなかった芯の強さのある豊かな果実味で、全身を体の中から熱くしてくれる感覚。それでも、やはりそこにあるのは自然の風景、綿のテーブルクロスに、飾らないお皿。心を洗ってくれるのは鮮烈で凛とした冷水ではなく、とろとろとした湯あたりの温泉。秋の露天風呂。優しく包まれながらじわじわと心が温まっていく…

レバノンの古代からの歴史や自然を考えれば納得がいくのだけれど、僕らの常識が届く近現代史だけに限って言えば、内戦と国際政治力学の中に揺れる紛争の中心地。それでも、人の営みがどうであろうと、旧約聖書の時代からワインがはぐくまれていたこの場所は、どこまでも、あくまでも、優しく、素朴で、温かい。白はどこまでも青い空と緑の杉の風景に爽やかにトリップさせてくれる。赤は、どんなに苛烈な時代でも、家族の笑顔が小さなテーブルに広がるだろう。ロゼがあればなんの駆け引きもなく、恋と愛とやんちゃなあの頃と幸せな老いを語れる。心が温かく優しく、そしていつのまにかすべてを忘れて語り合える。国際品種だろうと地品種だろうと、それは変わらない。

スヘイルさんが扱っているレバノンワインは、ギミックもトレンドも野心もマーケットも関係ない。どんな時代でも変わらない、という素晴らしさ。幸せな熱い涙が少しだけこぼれる。時代遅れかもしれないけれど、いや、これこそが、今、僕が求めているワインの一つなのだ。