antalya, hello again 1 @ANFAS

再びのアンタルヤは2014年2月18日~21日。2013年11月13日~19日、トルコのリゾートエリアとして発展を続けるアンタルヤにて開催された『ヘルス・ツーリズム展』の取材。あわせて現地のスパ施設の視察という機会。それからわずか3か月。今度は本業の分野である酒と食の展示会『FoodProduct』『Bevex』でのレポートがミッション。毎年幕張メッセでにぎわいを見せるFoodexと同様のイベントと考えていただければよいだろうか。さすが日本のFoodexとまではいかないが充分にトルコが食の王国であることを実感できるイベントだった。

トルコワインについての考察はまたの機会に…なのだが、不思議な感覚になるのは、この国のぶどう、ワインは、源流国にも数えられる、それこそ旧約聖書の時代から息づいているはずのものなのだが、こうした伝統の匂いが感じられないというか…今の造り手たちはすべてが、良い意味でも残念という意味でもまだまだこれからが正念場なんだろうと思う。地品種と国際品種(その国際品種と呼ばれるもののいくつもの源流がトルコ、イラン、グルジアなど黒海、コーカサスに広がっているというのもなんだか不思議)との付き合い方、自分たちの哲学と想いと、技術と成熟と、市場とのせめぎ合い、というところまで、まだ至ってはないのか、それはこれからなのか、という混迷に至る前の段階。国際的競争力という意味では、ワインそのものはなかなかよいものではあるのだけれど、パンチなのか洗練なのか戦略なのか、そのいずれもなのかまだまだ足りない感はある。
しかし、例えば社会学の教鞭を置きイズミルで、世界で勝負できるワインを造るために転身した上の写真の醸造家。野心的に世界を目指していこうとするワイナリーの姿がここにはあった。後に紹介するが2日目に開かれたワインテイスティングプログラムでも、こうした「世界標準」でのワイン~それは技術だけではなく、楽しみ方も含めてなのだが~という自我が生まれてきていることは間違いない。
なにせ、このままでもトルコワインはうまい。世界のどこにもない不思議なテイストもあれば、サンテミリオングランクリュのごとき洗練と熟成と強さがあるワインもある。無理に味を変える必要はなく、このままで存分に飲む側は幸せなのだが、だからこそ、より世界の市場でさらされて、これぞトルコワイン、というぶっとい幹のようなものをすべての生産者の力で作っていってほしいと願う。

実は…と語りだすことでもないのだが、トルコはお酒には寛容な文化だ。イスラム圏ではあるけれど、イスラム圏の中で政教分離を進め、バックボーンとしてのイスラミックカルチャーと、欧米的近代化、そこにアジアのホスピタリティが加わり、そのどの人生の喜びをも独特のミクスチャーでもっているという、実にユニークな国。さすがに日本のように飲みながら歩く、というまではいかないが、男性でも女性でも外食でお酒を飲むことは、都市部に関してはなんの問題もない。ビール、ハードリカーはどこでも手に入るし、どこでも飲める。残念ながらワインに関しては、「英語が多少でも通じる店=外国人が来る店=ワインが飲める店」という状況ではないかと推察するが、いずれにしてもお酒と食に関しては、非常に豊かな文化的背景と質量ともに豊かな環境にある。ウォッカ、カクテルへの関心も高い。

この日は縁あって、スイスの駐トルコ大使と一緒にいくつかのワインブースを回らせていただいたが、氏もトルコの食とワインについてのポテンシャルについては「とても高いものだと思いますよ」と語っていたが、まさに、ワイン単独での戦略も間違いなく必要なのだけれど、世界に打って出る、その前に国内でのワイン文化を花開かせるためには豊かな食文化との組み合わせは絶対的に必要なものだと思う。さすがにイスタンブールなどは進んでいて(この後実感するのだが)、すでにそこにインターナショナルな空気とのスタイリッシュな融合への道は進んでいた。おそらく外国人が多いリゾートエリアも同様に進んでいるだろう。こうした「かっこいい感」がもっと広がっていくためにも、より食文化との二人三脚は必要なのではないかと思う。展示会で感じたことを街で体感…というお話は、また後日。